一条工務店~海外事業展開と海外駐在の仕事の魅力について
海外駐在のお仕事、会社について、また、夢は「ここアメリカで新しいことにチャレンジをしていきたい」と、関わっているプロジェクトについても、熱く語っていただきました。
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●御社の海外での業務について教えていただけますか?
○現在約100名の社員が駐在員として、海外の一条工務店のグループ会社で活躍しています。地域別に見ますと、まずシンガポールでは主に資材の調達業務を世界各国の取引先を相手に行っています。また、フィリピンには開発部門と製造工場があり、弊社で使われる様々な製品が開発、生産され、最終的に日本で住宅として組み立てられます。このように、多くの製品を自社開発、生産しているのが一条の特徴だと思います。また、オーストラリア、そしてシアトルを拠点にアメリカにも進出しています。この二カ国では一条工務店の強みである「省エネルギー」や「環境にやさしい家」をキーワードに住宅の販売事業を展開しています。日本の住宅メーカーでも、このような形で海外へ進出している企業は少ないと思います。
●現在アメリカで担当されている業務についてお聞かせください。
○現地法人であるICHIJO USAは2009年12月に設立されたばかりの新しい会社です。現在はワシントン州シアトル市郊外のホームビルダーと共同事業で、全米初のネット・ゼロ・エネルギー集合住宅となるzHOMEプロジェクトに参画しています。
このプロジェクトを通じて日本とは異なる現場管理や販売のノウハウを吸収しつつ、同時進行で一条工務店の省エネルギー住宅、高耐久住宅の技術が販売を通じて北米に広く普及するよう、一条工務店オリジナルの工法に関わる部分のUS認証の取得と、建築地となる用地の取得を進めています。もちろん、現地法人の責任者として人事、総務、経理、法務等、会社のマネージメントに関わる業務全般の管理も担当しています。
●事務所の雰囲気についても教えていただけますか?
○会社の設立当初から借りている事務所ですが、社員も増え、少し手狭になってきましたので、現在の共同プロジェクトが一段楽する今年の夏には新たな事務所に移転する予定です。現在の事務所はアメリカン・スタイルとは異なり、個室だったり、パーテーションで仕切られたりしていないので、相談したいときは声を掛ければ誰とでも話ができるのが利点です。(笑)
●海外での仕事の難しさ、またそれをどのように乗り越えられたか教えていただけますか?
○月並みですが、やはり言葉の壁と考え方の違いではないでしょうか。実は私は一条工務店に入社してから今回が2回目の海外赴任で、一回目は29歳の時のフィリピン赴任でした。言葉の壁は自分で努力して解決するしかありませんでしたが、考え方の違いについては相手のある問題なので苦労をしました。宗教や生活慣習などにおいての考え方の違いはさほど問題は無いのですが、ビジネスに関わる商慣習や仕事の進め方で考え方が異なると、これは業務の遂行に支障が出てきます。こういう場合に業務命令的な指示をすると必ず失敗します。事業の目的を達成するためには、最終的には現地の従業員や取引先に理解してもらい、目的に向かってのベクトルを合わせてもらわなければなりませんので、まずは相手をよく理解する、その上で相手に理解をさせる、というプロセスを慎重に実行してきたように思います。とにかく人と話をすれば必ず何かが理解できる、勉強できると考えています。言葉のハンデはあまり気にせず、今でもできるだけ多くの人に積極的に会うように心がけています。
●御社で海外駐在になるには何か特別な試験などあるのでしょうか?大野さんの場合はどのようなきっかけで駐在になられたのでしょうか?
○特に試験制度などはありません。弊社では半年に一回、業務調査があり、その中で海外勤務の希望を直接人事部に伝えることが出来ます。ただ、海外勤務の条件というわけではありませんが、赴任にあたっては明確なミッションが与えられますので、業務の下地となる国内での仕事の基礎知識と一定の経験を身につけることはとても重要だと思います。
私の場合は、入社当時、将来海外で仕事をすることになるとは思っていませんでした。今思えば、当時担当していた業務の関係で、外国人研修制度で日本へ来たフィリピンの研修生と一緒に仕事をすることになったのがきっかけだと思います。当時、会社としても購買や生産の拠点として海外への進出を真剣に検討していた時期でもあった為、研修を終えて帰国した研修生OB達に手伝ってもらいながら事業の立ち上げを行い、そのまま駐在することになりました。当時の研修生達も今では立派な弊社の幹部社員になっています。
●御社では、若手ややる気のある人材に仕事を任せるとお聞きしていましたが、その通りですね。大野さんからご覧になられた御社の社風についてぜひお聞かせください。
○実におおらかな会社だと思います。自由闊達に意見の言える雰囲気で、若手の社員であってもやる気があれば会社は積極的にチャンスを与えます。与えられる権限が大きい分、責任も大きいのですが、社員の一人一人がそれぞれ与えられた業務を最後までやり遂げるという意識が徹底している会社です。「自ら考え行動する」ということの大切さを若手社員は入社後、すぐに業務を通じて学ぶことになります。
●駐在員として海外に出られるまでにどのようなキャリアを積んでこられたのかお聞かせください。
○入社してから最初の1年半は工場勤務でした。その後、最初のフィリピン駐在までは資材購買や業務合理化のための専門部署で働いていました。今回のアメリカ駐在の直前は営業所の統括責任者をしておりました。いわゆる本社内勤と営業所の両方を経験していますが、弊社ではキャリア・アップも兼ねてこのような異動は一般的に行われています。
●お仕事のやりがいをどのようなときに感じますか?
○アメリカ駐在の直前までは営業の責任者でもありましたので、やはりお客様に喜んで頂いたときや、感謝のお言葉を頂いたときに胸が熱くなります。家に対するお客様の夢や思い入れは日本もアメリカも同じだと思いますので、日本と同様に、たくさんのアメリカのお客様から喜びの言葉を頂きたいと思います。我々とお客様の関係はお引き渡しの後も何十年と続きますので、一条のファンをたくさん作り続けることが結果として社員のやりがいにも繋がると思います。
●御社の今後のアメリカでの業務展開について教えてください。
○一条工務店が2008年から発売を始めた新モデル、i-cubeは北米の2X4や2X6構法をベースにした超断熱・超省エネ住宅です。我々が拠点とするワシントン州シアトル近郊は、日本でいう寒冷地にあたり、温暖な地域より仕様と性能の差別化がしやすいと考えています。加えて環境保護や地球温暖化対策に対する住民の意識が非常に高い地域であり、一条工務店の超省エネ住宅は必ず支持されるものと確信しています。現在工事中のzHOMEの反応を見ながら、来年にかけて数十個単位で工事に着手し、数年中にシアトル近郊における中堅ホームビルダーの規模にまで成長させたいと考えています。近い将来はカナダも含めた太平洋岸北西部全体に施工エリアを拡大したいです。
●駐在員としての日々の生活や、休日休暇の楽しみ方について教えてください。日本でお仕事をされていたときと生活のスタイルやスケジュールなど、どのように変わりましたか?
○当地の就業スタイルに合わせると必然的に規則正しい生活になります。ただ業務上、日本とのやり取りも多いので、時差の関係上、帰宅後に自宅で仕事をすることもよくあります。
家族が引っ越してきて間もないので、今のところ、休日は家族と近くの公園や買い物に出かけたりして過ごしています。子供の夏休みに合わせて休暇が取れればアメリカ国内もゆっくり旅行してみたいと思います。
●留学生に期待することは何ですか?
○語学力とバイタリティです。変化の大きい四季だけでなく、地震や台風の多い日本で育まれた戸建て住宅の建築技術はこれまで海外ではあまり紹介されていませんでした。特にアメリカも木造住宅が主流であることから、新築だけでなく、建替え需要も含めて市場として大きなポテンシャルを秘めています。したがって弊社の場合、新たな市場への挑戦ということで、コミュニケーションの下地となる語学力はもちろんのこと、バイタリティ、特に行動力や突破力に期待しています。
●最後に 就職活動を行う学生に一言メッセージをお願いいたします。
○文系、理系を問わず、会社という組織の中には必ず皆さんが活躍できる専門分野や業務があります。どこの会社に就職しても、そういった業務のコアの部分に近づくこと、携わることで仕事は加速度的にやりがいのあるものに変わりますので、業界を限定することなく、自分の能力や適性、可能性まで考えて本当の「職探し」をしてください。ただしインターネットやパンフレット、セミナーでは一方通行の情報が多いので、今後セミナーなどの機会を通じ、社員と直接話すことが「職探し」のためには一番良い方法だと思います。